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つりがね草

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おばけじゃ


観月とキュウビなおはなし。
短いのです。
=====

「九月というのにまだまだ暑くてまいるのじゃ……キュウビもそう思うじゃろ?」
「キューン……」
「キュウビはもふもふじゃからの、大変じゃのう――」


「のうキュウビ」
「ココン?」
「鬼太郎のちゃんちゃんこは飛んだり敵を締め付けたり、思い通りに動いたりと凄いのう?」
「コン」
「これがあればわらわもパワーアップ間違いなしじゃ!」
「コン!」
「での?そのちゃんちゃんことやらは――鬼太郎のご先祖様の霊毛で作られたそうじゃ」
「キュウン?」
「うむ、霊毛じゃ。そのおかげで強い力を発揮できるようじゃ」
「…コーン」


「そういえばこの前テレビで見たんだけど――」
「む、兄じゃか」
「うん、でね?イギリスでは自分の飼っている犬の毛で編んだセーターが流行してるんだって」
「ほう、わんこの毛でも服を作れるのじゃな!」
「うん」
「なるほどのう」
「……キュウン?キューン?」

「最近は残暑も厳しいからね――」
「キュウビも暑いと言っておるしの?」
「コ、ココ…ン?」

「のうキュウビ?」
「ねえキュウビ?」
「キュッ!?」
「少し――涼しい姿にならない?」
「キュ、キュゥ………ココォン!」


「冗談じゃ、そう怯えるでない」(なでなで)
「キューン……」
「の割には本気のように見えたけど?」
「兄じゃが一緒に言うからじゃ」
「はは、ごめんねキュウビ」
「キュウン……!」
「まあ、キュウビの毛で作っても、俺以外から見たらはだかの王様みたいになっちゃうしね」
「むぅ、そうじゃったか……」
「あれ?観月……?」
「……ココン?」
「なんて、冗談じゃぞ?」

「ンキュウゥ……」
「信じておらぬようじゃな」
「キュゥウ」
「ちとやりすぎたかの…?そう言っても、わらわには鬼太郎と違って
いつも頼りになるキュウビが側におる。ちゃんちゃんこは必要ないのじゃ」
「キュ……」
「頼りにしておるぞ?」
「ココン!」
「うむ、それでこそじゃ!」

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予告

d2933b16.png
TuremyFamily5に申し込みました。
サークルカットのようなおはなしを作っています。
といってもサークルカットは急ごしらえのもので、この文章自体は話から引用してきたものではないので
内容は微妙に違うものになります。

なんとなく雰囲気に合わせて一人称を僕にしたけれども、それ以上の深い意味は無く――
いいのかな?

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トゥルークリーチャーズの撃退隊

リクエスト物
時間を限って書いたので書きっぱなしで本当にごめんなさい。
後で直します。
==========

『フレディさん!フレディさん!!』
「ん・・・・・・キュウビ?」
家の片隅、庭の端っこ、眼の届かないところ――
そこでスヤスヤと気持ちよく寝ていたフレディは、
なにやら急いでやってきた様子のキュウビに起こされました。

「どうしたのこんな夜中に・・・・・・」
眠い目を鼻で器用にこすりながら、フレディはゆっくりと立ち上がり伸びをします。
辺りはまっくら、家の電気は一つも点いていない様子――
頭の上には星が輝いていて、辺りも静か。
まごう事無き夜です。

『どうしたの?じゃないです!大変なんです!』
「だから何が・・・・・・」
『ドロボウです!』
「・・・・・・ドロボウ!?」



暗闇にひそめられる二人組の男の声。
ひとりはのっぽ、ひとりはチビ。
「こんな大きな家にはどんなお宝が眠ってるんだろうなぁ、なぁアニキ?」
「無駄口喋ってねぇで周りよく見ろ!」
ノッポがのんきなことを言って、チビの方に怒られます。
「だってよう、久々の上客だぜ?」
「ヘヘ・・・・・・まぁな、腕がなるぜ」
二人は通行人のふりをして、こそこそと家の前の道を何度も行ったり来たりしています。
「誰も来ないな、よし、行くか・・・!」
「ヒュゥ!」
「慎重に行けよ?」



「番号!1!」
「にー!」
『さん!』
「4」「5」「6!」
「「「総員6名です!!!」」」
フレディにキュウビ、家の中から呼び出されたオコジョにカエル。
天使家にお世話になっているアニマルたちが勢ぞろいしていました。

「現状報告!」
『怪しい動きをする二人組の気配を感じたので皆さんを緊急招集しました。
現在は門を突破して庭をぐるりと探るように移動中です!』
「まだ家の中には侵入してないの?」
『はい、でも時間の問題かと・・・・・・』
「みんな一緒にドロボウを撃退する方法を考えよう!」
フレディが進行役となって首脳会議を進めます。


けれども、なかなか良い案が出てきません。
キュウビ以外は下手に近づいたら命が危ないかもしれないのです。
だからといって、キュウビだけでも――悪人じゃなく、悪霊ならまだしも――追い返す上手い手段を持っていません。
無駄に時間が進むばかり、時間はあまり、ありません。
「うーん・・・・・・」
みんな眠い頭をフル回転させているのです。
良い案が浮かばないのも仕方ないかもしれません。
でも、早くしないとみんな優しい、大好きな家族を危険な目にあわせてしまいます。

「みんなで何か力を合わせれば・・・・・・」

誰かが呟いたその言葉。
それを引き金に、ピコン!と、三つのひらめき豆電球がオコジョ達の頭の上に現れます。
「そうだ」「そうだそうだ!」「あれは良いかも!」
『なにかいい案が浮かんだ?』
「今日」「ユキちゃんが」「こんな話を読んでたんだけど……」

……
――……
――――……

『なるほど、それはいいアイディア!』
「僕らでもおんなじ様にやれば……」
「「ドロボウをやっつけられる!」」
にわかにみんなが活気付きます。
「じゃあみんな、これで行くよ?」
みんなは力強く頷くと、一斉に駆け出します。



「当然鍵は・・・・・・かかってるな。鍵は大事だよなぁ?」
「こんな大きな家だ、しっかりセキュリティー入れてるだろうよ」
「でもそれをくぐり抜けるのが?」
「「俺たちプロだ!」」
「クヒヒッ」
決め台詞のようなものを言って、二人は小さく笑い合います。
「さぁて仕事に取り掛かるかな――」
ノッポは持っていたカバンを漁り始めます。
「・・・・・・あれ?どこにやったかな?」
「はやくしろよ!」
「慌てんなって、こういうのはじっくりやったほうが、ほら――」



「みんな準備はいい?」
フレディが最後の確認をします。
ドロボウ達が侵入しようとしている場所のすぐ近く、家の影。
そこにみんなは勢ぞろいしていました。
「邪魔者な」「あいつらを」「さっさと」
「「「追い払うんだ!」」」
オコジョはフレディの頭に乗っかって、横に三匹並んで、
「オッケー、やろう!」
カエルはそのオコジョ列の前方に、フレディの頭に一緒に乗っています。
『チャンスは今です!』
キュウビはみんなのすぐ上、空中にふわふわっと浮いていました。

みんなが一箇所に集まるフォーメーション。
オコジョ達が聞いた、綿雪が読んでいた本に書かれていた方法――
そう、これからみんなでドロボウ達を脅かしてやるのです!

カエルは大きく頬をふくらませて、体全体が揺れるほどに喉を鳴らします。
「ゲロロ!ゲロロ!」

キュウビは喉の奥から声を出し、相手を畏怖させる遠吠えを披露します。
『ココーン!ケーン!』

オコジョ達はトリオで鳴き声を上げ、調和増幅させます。
「キィ!」「キィ!」「キィィ!!」

フレディは大きく大きく息を吸い込むと、息の限り、思いっきり声を張り上げました。



「ぱおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!」




その瞬間、二人は驚いて一メートルは飛び上がったかもしれません。
「な、なんだなんだ!」
「急に何だってんだ!?」
「はっ!ちっ、ヤバイぞぼさっとしてねぇでズラかれ!」
「え?なんでだよせっかくここまで――」
「馬鹿!セキュリティに引っかかったんだよ!喋ってねぇで足動かせ!」
「なんだよ、俺何もしてねぇよ!?」
逃げ足だけは一級品。
二人はあっという間に家の敷地から飛び出して、暗闇の中に逃げていきました。

それからほんの少しして、家のいろんな部屋の電気が点き始めます。
フレディの大きすぎる鳴き声でみんな起きてきてしまったのです。

「なに?今の声――」
「象の声のような・・・・・・」
「何!?そんなの認めないわよ!」
年の大きいお姉ちゃん達がリビングに集まり始めます。
「んぅ・・・・・・」
そんな中、カーテンが開いて虹子が姿を表しました。
パジャマ姿の虹子は眠そうな顔をしてあたりを見回し――こちらに視線を合わせます。
「あっ、虹子ちゃん!聞いて、さっき――」
「・・・・・・フレディ夜は静かにしなきゃだめ!」
「――はい・・・」
「おやすみなさい・・・・・・」
虹子はカーテンの向こう側へ帰っていってしまいました。

褒めてもらえると思ったフレディはがっくり肩を落とします。
「うう、頑張ったのに・・・・・・」
「まあまあ」
『仕方が無いですよ』
「まあ、いいんですけどね・・・・・・」

「じゃあみんなお疲れ様でした」
「「「おやすみなさーい!」」」
『おやすみなさいです』
一仕事終えてみんなが元居た場所へと散らばっていきます。

その一部始終を見ていた影がひとつ――
「ふむ・・・・・・いい実験台がやってきてくれたと思ったんだがな?感謝するといい――」
霙が開けっ放しになっている門戸を眺めながらそんな事をつぶやきます。
「私たちの家族に助けられたんだからな――さて、寝直すとしよう――」


――こうして天使家の平和は、日々守られています。

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もくもくウィッチ!

夕凪SSです。
もくもくっと、みなさんも子供の頃にきっと経験があるはずです。

=====
「んふふー♪」

ある暑い夏の日の部屋の中
あっちに行ってはそわそわと
こっちに行ってはクフフと笑い
落ち着きなさげな夕凪の姿がそこにありました。

同じ部屋にいる星花は夕凪のそんな動きが気になってしまいます。
「ちゃんと宿題してないと怒られちゃうよ?どうしたの夕凪ちゃん、なんだかすごく楽しそう」
「えへへ、実はね――」
くるり!と夕凪は星花の方向を振り向いて、
実は言いたくうずうずしてたみたいに、何かを喋ろうとしたその時

「ただいまー」

「――あっ、帰ってきた!お兄ちゃーん!」
ぱっ、と星花と話そうとしてた事さえもすっかり忘れて、夕凪は部屋から飛び出していってしまいました。
星花はあっけに取られてしまいます。
「……行っちゃった…もう、なんだろう夕凪ちゃん?お兄ちゃんを待ってたのかな?」
なんだかよく分かりませんが、星花も兄をお出迎えするためにドアをちゃんと閉めてから夕凪の後を追いかけることにします。


一方玄関ではタオルを持った蛍が兄を迎えに出てきていました。
「ただいまー、ふぅ、あっつい……」
「お帰りなさいお兄ちゃん、お疲れ様です――タオル使いますか?」
「うん、ありがとう。ちょっと急いで帰ってきたら汗がもう大変なことに――」

そこへ、やけに騒がしい足音が二階から下りてきます。
「お兄ちゃんお兄ちゃん!貰ってきてくれた?」
一直線に玄関に向かうその足音の主は、もちろん夕凪でした。
玄関に現れた夕凪は蛍の隣をするりと駆け抜けると、玄関に上がったばかりの兄にぶつかるようにくっつきます。

「こら夕凪ちゃん、ちゃんとおかえりなさいしなきゃダメでしょう?」
「おかえりなさい!ねぇ貰ってきてくれた!?」
「もう……」
「あはは、ただいま夕凪。ほら、ちゃんと貰ってきたよ」
「わ!ありがとお兄ちゃんv」
兄は持っていた白い箱を夕凪に手渡します。
その箱は暑い外から帰ってきたのにひんやりとしていて――夕凪はその冷たさにとっても満足します。

軽い足音で星花が追いついてきました。
兄におかえりなさい、と笑顔を向けて、夕凪の側まで歩いて行きます。
「お兄ちゃん、何を買ってきたんですか?」
「今日のデザート、星花も見てみなよ」
そう言って星花に見えるように開けられた箱の中身。
そこには色とりどりの、いろんな種類の美味しそうなアイスが入っていました。
「わあ、美味しそうです!――夕凪ちゃんが待ってたのってアイスだったんだ?」
割と自分のことは棚にあげて、星花は食いしん坊な夕凪のことをクスクスと笑います。

「ううん、違うよ?」
「えっ、違うの?」
「今日のユウナの目的はアイスじゃなくてこっち!」
ばばん!と夕凪は箱の中を大げさな動きで指差します。
なんだろう?と星花がそこを覗き込むと――
指の先のアイス――の間には白い煙をもわもわと出している、真っ白なかたまりがありました。
「……ドライアイス?」
「うん!ドライアイス!お兄ちゃんに貰ってきてねってお願いしてたの」
わくわくとした、楽しそうな夕凪の元気な声が玄関に響き渡ります。

「夕凪の夏休みの計画だい2だん!白い煙でマホウ使いっぽくなっちゃう実験!」



「アイス選ぶのは早い者勝ちだよー」
「夕凪はいーちご!」
「うーん、どれにしようかな…?」
「私はバニラにします」
「わらわもバニラにしようかの」
「まっちゃじゃないの?」
「……わらわがいつもそういうのを食べると思ったら大間違いじゃぞ?」
「まあいいけど、私はレモンにするわ?」
アイスがあるよと一声かけると、アイスの箱の周りに小さい子達が集まって、きゃいきゃいとアイスを選び始めます。
机に届かない子達は精いっぱい背伸びをして、箱の中を覗き込もうと頑張っていました。
兄は後ろから抱えてあげて、中を見るお手伝いをしてあげます。

「それじゃ、いただきまーす!」
「……アイスもいいけど、食べてるうちにドライアイス溶けて無くなっちゃうよ?」
スプーンを握りしめて今にもアイスの蓋を開けようとしていた夕凪の動きがピタリと止まります。
「うっ、じゃあそっちを先に……」
アイスは冷凍庫に保存しておくことが出来るけれども、ドライアイスはそうも行きません。
兄に注意されて、夕凪は名残惜しそうにスプーンを置こうとします。
「ふむ、そうしたら今度はアイスが無くなってしまうかもな?食いしん坊な誰かさんが勝手に食べて――」
「う、ううぅ……」
そこに今度は霙が、チョコレート味のアイスを取りながらさらりとそう言いました。
夕凪はアイスを抱えたまま、どうしたらいいか分からず凍ってしまったようにぴたりと動きが止まってしまいます。
「お姉ちゃぁん……」
「はいはい、霙ちゃんもいじめないの。ちゃんとアイスは冷蔵庫の中に取っておいてあげますからね?」
春風が夕凪の頭を撫でてあげて固まりを溶かしてあげると、アイスを受け取って冷蔵庫の中に持って行きます。
「――はい!これで大丈夫です♡」
「ありがとうお姉ちゃん――じゃあ夕凪準備するね!」
「あ、ドライアイス弄るのは危ないからここでやってね?」
「はーい!」
ドライアイスを扱うのはちょっとだけ危ないので、一応兄が実験の監督役です。
夕凪はキッチンに走ると、ガラスのコップに水を入れて戻って来ます。

「ドライアイスは手で触らないこと、わかった?」
「うん!まかせて!」
ドライアイスの固まりをスプーンですくいながら夕凪は答えます。
「ほら、ちゃんと手元見て――あと出てきた煙は直に吸わないようにね?」
「さっきから夕凪おねえちゃまは何をしているの?」
夕凪と兄がやいやい騒いでいると、なんだろうとアイスを食べながらマリーが近寄ってきました。
ギャラリーが増えて、夕凪の目がきゅぴんと輝きます。
「ふふーちょっと待ってて!面白いもの見せてあげる!」
夕凪は集まってない他のみんなにも呼びかけて、自分の周りに集めます。
「みんな見てて、いくよー!」
みんな注目してることを確認すると、慎重にドライアイスをスプーンですくって――
そっとドライアイスをコップの中に落としました。

ぽちゃん、とその瞬間、水の中のドライアイスはコポコポとたくさんの泡を作り出し
その泡が水面まで浮かび上がって、コップの上からたくさんの白い煙を吐き出します。
それはまるで、魔法使いがクスリを作っている釜のように――

「やったあ成功!すごいすごい!」
「わぁ…!」
「もくもく!」
「おお、すごいのじゃ!面妖な――」
小さい子達はアイスを口に運ぶのも忘れて、その光景に目を輝かせ始めます。
溢れ出た煙はふわりとテーブルの上に広がって、マリー達の手元まで流れてきます。
「きゃ、なにこれ冷たい!」
「ほんと、つめたい…」
「ひえひえ!」
押し寄せる煙に小さい子達は少しだけ怖がって、触れたときのその冷たさに驚きながら、
安全なことが分かると楽しそうに小さな手のひらを煙の中に泳がせていました。


「ねえ下僕、あれ、なにやってるの?」
そんな夕凪達の様子を見ていた兄の隣に、氷柱がやってきます。
「ドライアイスの実験だよ、水の中に入れるやつ」
「ふぅん――このアイス用の?今じゃ保冷剤の方が普通よね」
「うん、入れてもらったんだ、夕凪にねだられて――まあ今日は暑かったから保冷剤じゃ間に合わなかったと思うよ」
氷柱はソファーに座ると、アイスを食べ始めます。
「ん、おいし。それにしてもドライアイス――懐かしいわね」
「氷柱も昔は同じことやったのか?」
「一度ね、でも夕凪とは違うわよ」
「?、というと?」
「……たぶん見てれば分かるわ」


「ねぇ夕凪お姉ちゃま、これはどうして白い煙が出ているの?」
白い煙に手をかざしていたマリーがそんな事を夕凪に聞いてきます。
夕凪はえへんと胸をそらすと、自信いっぱいに答えました。
「実は今、夕凪はマホウのクスリを作っているのだ!今入れたマホウのアイスでこの水から白い煙を出して――」
「違います夕凪姉、あれはドライアイスです。ドライアイスは二酸化炭素の固体で、二酸化炭素は常温で気体であるため、固体から気体へと昇華が起こり――夕凪姉?」
「???」
「夕凪姉聞いてますか?」
「う、うん……でもよく分かんない…」
「マリーもなんだか…夕凪のお姉ちゃまのマホウじゃないの?」
「あっ、違うよマリーちゃん!夕凪のマホウだよ!」
「夕凪姉…嘘はいけません」


「はは…」
「分かった?」
「まあ、ね」
氷柱は呆れたように、兄は苦笑して夕凪の様子を眺めています。
「原理云々よりも、夕凪にとっては不思議そのものが大事って訳で、好奇心がいっぱいだな」
「大事ってよりはなんでもマホウだと思ってるのよ、海晴姉さまの天気予報は海晴姉さまの魔法だって思ってるんだから」
「いいんじゃないか?気象とか物質の三態とか夕凪にはまだ早そうだし……」
そこで、氷柱の方を見た兄はふと気が付きます。
「……あ、おい氷柱、そのアイス」
「ん?なによ下僕、これ私のなんだから一口もあげないわよ」
アイスを指さされて隠すように持ち替える氷柱。
氷柱が食べているアイスは、いちご色をしてて――
「いやそうじゃなくて、それ――」

「ああーっ!!」
「え!?なに?」
「あれ…アイス……」
「これがどうしたの?」
「アイス……氷柱お姉ちゃんが夕凪のアイス食べたー!!」


「ごめんって言ってるでしょ!」
「別にしておけば分かるかなって思って……ごめんなさい夕凪ちゃん、春風も悪いんです」
ぷりぷりと怒る夕凪に春風が申し訳なさそうに、氷柱はちょっと逆ギレ気味で謝っていました。
「うー…でもゴメンですんだらケイサツはいらないよ!」
「夕凪がそれ言うの?」
「ああもう分かったわよ!買ってきてあげるわよ」
「ほんと?やったあ♪じゃあもいっこドライアイスを……」
「調子にのるな!」
ゴチン、と鈍い音が夕凪の頭から響きます。
「…お姉ちゃんがぶったぁ……!」
「一個だけなんだから無くていいのよ。下僕、付き合いなさい」
「え、俺また暑い外に出るの嫌――」
「な・ん・か・言った?」
「はぁ、わかったよ……」
「お兄ちゃんも行くの?じゃあ今度は夕凪もついてく!」
「は?それじゃ私が行く必要が無いじゃない」
夕凪のノリだけの発言に氷柱が突っ込もうとした所で、
「あの、ユキも一緒に行きたいです」
「それならマリーも行きたい!」
「わらわも!」
「さくらも…」
夕凪に続いて、みんな我慢してたみたいに次々と手が上がります。

「俺ひとりじゃみんな見るのは無理だから、ね?」
兄の懇願に氷柱は仕方が無いと言った風に、ひとつ重いため息を付くと――
「買うのは夕凪の一個だけ、それでもみんな暑い外に行きたいの?」
そう最後の確認をしました。
みんなそれでも良いといったにっこりした顔を氷柱に見せます。
「じゃあみんなで行くわよ、さっさと準備してきなさい。帽子を忘れないように!」
「「「はーい!」」」
「遅いと置いていくからね!」
氷柱に急かされて、各々少しだけ急ぎながら自分の部屋に戻っていきます。
みんなが戻ってくるのはこの直ぐ後――
余分に一個アイスを買いに行くのが、結局みんなで散歩になってしまいました。

「氷柱もなんだかんだで面倒見が良いよね」
「うるさい」
げしり、と痛い音が兄の足から聞こえました。

(終)

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sunny side


しとしと。
ざあざあ――

なんだか最近は雨ばかりです。

海晴お姉ちゃんに「梅雨」という時期だと教えてもらいました。
今くらいはこんなふうに、お天気は雨ばっかりになってしまうそうです。

だから――
春風お姉ちゃんは食べ物が傷みやすいからって
蛍お姉ちゃんはお洗濯物が溜まってしまって
ヒカルお姉ちゃんは思いきり体を動かせなくて
マリーちゃん達はつまんないの歌

どんよりとした雲からは、雨の粒が幾つも落ちてきて――
みんなの心もじめじめとさせてしまいます。

ユキも――晴れの日の方が好きなので、雨の日は心が落ち込んでしまいます。
ユキはあんまり外に出られませんから――晴れてても雨が降っても、おうちの中にいたりして、あんまり変わらないかもしれません。
ううん――雨の日は、みんながおうちの中にいてくれるので、淋しくないかもしれないです。

だけど――
やっぱり、みんな笑顔でいてくれる方が、ユキは嬉しいので――
みんなが笑顔になる晴れの日の方が、ユキは好きです。

梅雨は雨ばっかり――
ずっとこのまま晴れないのかな……と、心配になってしまいます。


でも、
例えば、さむい冬はぜったいに暖かい春になるみたいに、
ずっとずっと、どんより雲に雨ばっかりのお天気は続きません。



ユキがいつもよりちょっと早く朝目を覚ますと、廊下からパタパタと忙しそうなスリッパの足音が聞こえてきました。
廊下を覗いてみると、それは、廊下を行ったり来たりする春風お姉ちゃんに蛍お姉ちゃんの足音で――

春風お姉ちゃんに蛍お姉ちゃん――それに洗濯機、みんな朝からとっても忙しそうです。
でも、とっても忙しそうなのに、蛍お姉ちゃんたちの顔は何だかうれしそうでした。

蛍お姉ちゃんはいつも笑顔ですが、今日は特別です。
ユキはなんだか、お姉ちゃんの気持ちがわかってしまいます。

うふふ――
そうです!

今日は――みんな待ってた晴れの日です!


「春風ちゃん、カーテンも洗っちゃいましょうか?」
「うーん、干す場所がもう無いかも……?」
洗われた洗濯物は春風お姉ちゃんたちが待つお庭に運ばれます。
お庭にはベッドのシーツやカバー、色んな洗濯物――
見渡す限り…は、少し言い過ぎかもしれませんが、たくさんたくさん並んでいました。

「『春すぎて夏来るらし 白栲の衣干したり天の香具山』――と言ったところかの?」
通りがかった観月ちゃんがお庭を見て、なにか不思議なことを言います。
「…?、どういう意味ですか?」
「うむ、そうじゃな……
初夏の初々しい葉の緑色と、干された衣の白色とが映えて、夏の到来を教えてくれる……といった歌じゃな」
「ふうん――なんだかちょっと分かる気がします」

観月ちゃんの言うとおり、洗濯物のまっしろと、芝生のみどりに木のみどり色、それに――きれいな青色の空!
全部が全部すごくきれいで、ユキには輝いて見えます。
えへへ――おかしな感じですが、なんだかどきどきしてしまいます!
ユキも、もっと――


「最後のカゴ持ってきたよー…っと」
「ありがとうございます。これで最後ですね?」
「うん、お願い」
「はい!任せてください!」

よいしょっ、と蛍お姉ちゃんはお兄ちゃんからカゴを受け取ると、洗濯物の森の中に戻っていきます。

「お兄ちゃんお疲れ様です」
「ありがと、ユキもお手伝い?」
「いえ、ここでお姉ちゃん達のことを眺めてたんです」
「そっか、なかなかに壮観だもんなぁ」

お兄ちゃんはユキの隣に立って、ふぅと一息をつくと眩しそうに庭を眺めます。
おでこに少しだけ汗がにじんでいました。

「よし、じゃあ俺も暇になったし、少し散歩でもしてくるよ」
「お散歩ですか?」
「うん、こんなにいい天気だしね外に出ないともったいなくて」
お散歩……そうです、お兄ちゃんとなら――
「それで――」
「あのっ、お兄ちゃん!」
「うん?」
「えっと、あの――ユキも連れて行ってくれませんか?」

ちょっと勇気をだして、お兄ちゃんにお願いをします。
お兄ちゃんはユキの言葉を聞いて少し驚いたような顔をしていました。
お願いしてしまいましたが…急に不安になってしまいます。

「ダメ、ですか……?」
「ううん、行こう!」
「ホントですか?」
「ホントも何も、俺もユキも誘おうとしてたところだからね」
お兄ちゃんは笑って言います。
「え?あっ、遮っちゃってごめんなさい……」
「はは、それくらいで謝らないの、じゃあユキ、改めて――」

優しく笑って――今度はお兄ちゃんから、お誘いしてくれます。

「俺と一緒に散歩に行こっか?」
「はい!」

(続く)

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