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つりがね草

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観月日記風SSです。
=====

ふむ、ふむ。

見るのじゃ兄じゃ。
良い感じに山の木が紅葉してきておる。

緑と赤と黄とがまだらに混ざり合って――
まだすべてが染まりきっていない、夜明けのような山の風景。
うむ――
わらわはこの風景もなかなか好きなのじゃ。


じゃが、吹雪姉じゃの言うとおり――
今年は、どうも山の様子がおかしいようじゃ。

収穫を急ぐ忙しい足音でもなく
豊作を祝う騒がしい宴の声ではなく――

不穏な息遣いだけが
ざわり、ざわりと聞こえてくる。

うむ。
このままだと大変じゃぞ兄じゃ!
山の動物だけでない、

地獄の釜が開いたように――

山の頂から湧き上がった物怪共が

あふれるように、行き場を求めて

百鬼夜行をして町に降りてくる――

……

なんて事は無いのじゃがな?

フフ、冗談じゃ。
兄じゃが心配そうな顔で見るから――つい、の?


降りてくるのは無害で小さな物怪だけじゃ。
キュウビのようにかわいらしい、の?

いくら山の実りが少なくなろうと――
本当に恐ろしいものは山からは出ぬ。
――出れぬ、といったほうが正しいかの?

……

まあ、その分山に入って来る者に対しては容赦はせぬから――
兄じゃも、気をつけるのじゃぞ。

うろうろと――
何時間も山の中をさ迷うのは、それは魅入られても文句の言えぬことじゃ。

もし兄じゃがそんな事になっても、わらわとキュウビがいるから大丈夫なのじゃが――
今日はここから、眺めるとするかの。

さあ兄じゃ、座ってたも?一緒に見るのじゃ。

フフ――
兄じゃの隣は暖かいのう♡

――うむ。絶景じゃ!


=====

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ストライク

ヒカル日記風SSです。
あんまりみんな行きそうにないイメージ。
=====

――ん?

どうしたんだ、オマエ。
そんなぎくしゃく変な歩き方して……

……筋肉痛?
ボーリングをやったからって?

じゃあ、この右腕とか――

ちょん。

――ぷっ、あはは。
なかなかいいリアクションをするじゃないか、オマエも?
ああごめん悪かった、謝るって。
でも――ははは、そんなに痛がるなんてな。
運動不足だぞ?

ボーリングはさ、簡単にいえば玉を転がすだけだから
あんまり体を動かした気がしないけど――
結構体使ってるんだよな、あれって。

私も次の日は筋肉痛になったな。
まあ、オマエほどじゃないけどな?


ボーリング――
そういえば、長いことやってないな。

ああ、いや――
私はああいうのはあんまり得意じゃないんだ。

なんて言えばいいんだろ?

重い球のくせに繊細っていうのか
調整が難しいっていうのか――

スペアとか、あんまり取ったこと無いし。

……

でも、ストライクはけっこう出すんだぞ?

スコアとかは忘れちゃったけど、あの瞬間は結構好きなんだ。

投げた球が白いピンに向かってまっすぐに転がっていって――
なぎ倒す瞬間に小気味のいい音を響かせる。

あの音を浴びる感じ。


――うん。
思い出してたらやりたくなってきた。

なあ、今から一緒に行かないか?

なんでって……
オマエ以外じゃ――まともに出来る奴いないじゃないか。

春風もホタもあんな重いの投げられなさそうだし――
氷柱はちょっとはできそうだけど、あんまり乗り気じゃないだろうし。
ああ、立夏なら誘ってもいいかもしれないけど――
筋肉痛くらい我慢して、な?


うん、良かった。
独りでやってもつまらないしな。
やっぱり誰かと一緒のほうが楽しいし。
オマエが投げるところを見るのは――面白そうだしな♡

フフ――
200越えるまで帰らないからな♡

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カルス

吹雪日記風SSです。

書いていてふと思いましたが、小説では兄が家族に隠し事をしている立場で、
日記の方では(吹雪の体調的意味で)家族が兄に隠し事をしている、逆の立場になってるんじゃいかな、と。
うん、違うねこれ言ってみただけです。
=====

カキ、クリ、ナシ

ビワ、アケビ、ブドウ

――実りの秋です。

庭、通学路、公園に裏山――
普段目にする植物の一部は葉を紅葉させ、来るべき冬に備えてその準備をしています。

そしてふとよく見ると――
鮮やかな葉に隠れて個性のある姿の実が付いているのが分かります。

暖かい色をした小さな果実。
柔らかそうで、ともすれば触れた途端に火傷してしまいそうな赤。

青空は公園を走りまわってはしゃがみ込み、走りだしたかと思えばまたしゃがんで――
そうして頬を紅潮させて帰ってきた青空は、
持ち切れないほどのどんぐりを両手に乗せて、満面の笑みで見せてくれました。

このどんぐりが――
青空にとっては、宝物に見えるのでしょう。

そう考えると青空にとっての公園は、私にとっての図書館になるのでしょうか。

……
私もあんな表情をしているのでしょうか?
キミには――どう見えていたのでしょうか。


――そして
この季節になると、家の中にもふわりと甘い果物の香りが漂うようになります。
うちは皆が果物好きなので、海晴姉達は頻繁に果物を買ってきてくれます。

今日のはブドウです。

ブドウはそのまま食べるのも美味しいですが、
春風姉がそのブドウを使って作るジェラートもとても美味しいです。

キミも一度は食べてみるといいでしょう。
ほっぺたが落ちるとは、きっとあのことです。


……

ですが、
今年の秋の味覚はどうやら実りが悪いようです。

理由は夏の異常気象――私も体調を崩してしまった猛暑の影響です。

ニュースを賑わしているのは、山に餌がなくて町におりてきた熊の話題。
まあこの辺りには熊がいるような山はないので、家族が襲われる心配は――

――ああ。
どうやら、家の中にも熊はいたようです

早く行かないと、食べられてしまいますよ?

もちろん私と兄さんではなくて、ジェラートが、です。

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おばけじゃ


観月とキュウビなおはなし。
短いのです。
=====

「九月というのにまだまだ暑くてまいるのじゃ……キュウビもそう思うじゃろ?」
「キューン……」
「キュウビはもふもふじゃからの、大変じゃのう――」


「のうキュウビ」
「ココン?」
「鬼太郎のちゃんちゃんこは飛んだり敵を締め付けたり、思い通りに動いたりと凄いのう?」
「コン」
「これがあればわらわもパワーアップ間違いなしじゃ!」
「コン!」
「での?そのちゃんちゃんことやらは――鬼太郎のご先祖様の霊毛で作られたそうじゃ」
「キュウン?」
「うむ、霊毛じゃ。そのおかげで強い力を発揮できるようじゃ」
「…コーン」


「そういえばこの前テレビで見たんだけど――」
「む、兄じゃか」
「うん、でね?イギリスでは自分の飼っている犬の毛で編んだセーターが流行してるんだって」
「ほう、わんこの毛でも服を作れるのじゃな!」
「うん」
「なるほどのう」
「……キュウン?キューン?」

「最近は残暑も厳しいからね――」
「キュウビも暑いと言っておるしの?」
「コ、ココ…ン?」

「のうキュウビ?」
「ねえキュウビ?」
「キュッ!?」
「少し――涼しい姿にならない?」
「キュ、キュゥ………ココォン!」


「冗談じゃ、そう怯えるでない」(なでなで)
「キューン……」
「の割には本気のように見えたけど?」
「兄じゃが一緒に言うからじゃ」
「はは、ごめんねキュウビ」
「キュウン……!」
「まあ、キュウビの毛で作っても、俺以外から見たらはだかの王様みたいになっちゃうしね」
「むぅ、そうじゃったか……」
「あれ?観月……?」
「……ココン?」
「なんて、冗談じゃぞ?」

「ンキュウゥ……」
「信じておらぬようじゃな」
「キュゥウ」
「ちとやりすぎたかの…?そう言っても、わらわには鬼太郎と違って
いつも頼りになるキュウビが側におる。ちゃんちゃんこは必要ないのじゃ」
「キュ……」
「頼りにしておるぞ?」
「ココン!」
「うむ、それでこそじゃ!」

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予告

d2933b16.png
TuremyFamily5に申し込みました。
サークルカットのようなおはなしを作っています。
といってもサークルカットは急ごしらえのもので、この文章自体は話から引用してきたものではないので
内容は微妙に違うものになります。

なんとなく雰囲気に合わせて一人称を僕にしたけれども、それ以上の深い意味は無く――
いいのかな?

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