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つりがね草

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連載:キュウビの話その4

観月誕生日おめでとう!
大好き!
キュウビの話その1その2その3

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裏山はその名のとおりに家の裏手にある山のこと。
四季を通して様々な表情を家の窓から見ることができる。
そんなに高い山ではなくて、良い遊び場な、気軽に行ってこれるような身近な感じの山だと思う。
姉の一人は遭難していたのだけど。(本人は認めていない)

――さくさく
――さくさく

そんな裏山の落ち葉を踏みしめる音が二人分。
正しくは一人と一匹。
ひとつは自分。
もうひとつはキュウビ。
二人並んで裏山の山道を登っているのだった。


あのキュウビが部屋にやってきてお願いされた日の続き――
果たしてキュウビの目的がわかったのだけど。
自分の言いたかった事がやっと伝わって喜び勇んだのか
キュウビは座ったままの俺の服の裾を噛んでひっぱり、裏山に出発しよう急かしたのだった。
「フゥン!」
「ちょ、ちょっと待てってキュウビ」
キュウビに協力したいのは山々だけど……
今からはちょっと厳しいと思う、その目的完遂にどの程度時間がかかるか分からないから。
山の中で日が暮れてしまったら、いくらキュウビと一緒だからと言っても目も当てられなくなってしまう。
みんなを心配させてしまうし――霙姉さんには笑われてしまうだろう。
「フフ――オマエはやっぱり、私の可愛い弟だな?」
ああ幻聴が聞こえるような気が

だから、ぐいぐい引っ張っているキュウビの頭をなだめるようにひとつ撫でて、
今すぐは無理な理由の説明と明日ちゃんと一緒に行く約束をする。
――だから明日にして欲しいな?」
……クゥン」
くわえていた裾をそっと離す。
キュウビはわかってくれたみたいだ、良かった。
「じゃあ約束」
「コン!」
キュウビの小さな前足を持って握手のようにする。
ゆびきりげんまんの真似事だ。
裏山に何を取りに行くのか聞いてみたかったのだけど
はい・いいえ方式ではどうしようなくて
気になるけれども前向きに、翌日の楽しみにすることにした。


その翌日の朝――
……ュウン……!」
「んん……Zzz」
ベッドに寝ている俺の胸の上でトントンと何か飛び跳ねているような気がする。
声も聞こえるような気がする。
でも眠い――
天秤にかけられて、即決で睡魔が勝った。
欲に正しく覚醒しかけた意識を再び夢のなかに戻そうとしたら。
……コォン!」
「ごふ、あれキュウビ?」
文字通りたたき起こされた。
顔に肉球パンチ。

「あ、ええとおはようキュウビ?」
「コン!」
体を起こそうとすると、キュウビは胸の上から飛び降りて元気に挨拶する。
一つ伸びをして、時計を見ると朝――まだみんな寝ている時間だった。
これはまた気の早い……
いや、それだけ張り切っている様子で
キュウビを見るとその瞳は力強く、体全体からやる気がみなぎっている。
昨日からの分が蓄積されているようだ。
だけれども
「あのさ、朝ごはん食べてからにしない?」
こう寒いのに、追加エネルギー無しで朝から山を登るのはちょっと酷な話だった。
「ココォン!」
「ごふぅ」

そんなこんなで朝食を食べた後、ちっちゃい子たちに見つからないようにこっそり家を抜け出て――
キュウビと裏山を登っているのである。

――さくさく
――さくさく

寒い。
さすがに寒い。
吐く息は白く、ふわりと一瞬漂ってすぐかき消える。
山の斜面を駆ける北風が容赦なく体温を奪ってつらい。
厚着はしてきたものの、体自体があったまっていないのだ。
隣を歩くキュウビは自前の毛皮のおかげか
寒さを気にしてない様子で、前を見つめて歩いている。
ふくふくとしたその毛皮がすこしばかり、いやかなり羨ましく見える。
あったかそうだなぁ……

「ねえキュウビ」
「?」
てくてく歩きながら顔だけこっちに向ける。
「どのあたりまで登るんだ?」
「クゥキュウン!」
「わぁ!?」
ちょっと考えるようにしたあと、ふいにぴょんと飛んで俺の頭をめがけてジャンプする。
いきなり過ぎてすごく心臓に悪い、反射で防御の姿勢を取ってしまった。
(それなのにちゃんと頭に着地したキュウビはさすがだ)

俺の頭の上にキュウビ――いつもの観月と同じ格好になる。
乗ると言うよりは掴まっているような感じ
頭の上がもふもふと暖かくて、むずむずとちょっと気になるけれども
キュウビに認められたような気がしてなんだか気持ちが良い。
なんとなく自分の頭を撫でるように、頭に乗ったキュウビの背中を撫でてみる。
うん、なんかこれは、良いぞ!

そんなことを堪能していると、キュウビが頭に乗ったまま額をぺしぺしと叩く。
びっくりした時から足を止めたままだった。
「ああ、うん」
上に向かって足を動かそうとしたのだが
「ココン!」
キュウビはそれを止めたのだ。
「え?こっちじゃないの?」
どうやら登る道ではない様子。
といっても来た道は一本道で、分岐している場所は無かった。
ということは……

ぐるりとその場でゆっくり回転してキュウビソナー
ある一方を向いたときに、キュウビは元気よく「コン!」と鳴いた。
そこは山道から90度。
よく見ると人が通れる道があるようなそうでないような――
山の茂みに入っていく、まさに獣道だった。
頭に乗ったのは、そういうこと?
「マジですか?」
「キュウン」


(続く)


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