つりがね草
- SS置き場です。 9割方BabyPrincessの二次創作になります。
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明日の天気は?
コン。コン。
ホワイトルームのドアを軽くノックして、星花がひょこりと中を覗き込みます。
「観月ちゃんいますか?」
「あら、星花お姉ちゃま」
「どうしたのかの星花姉じゃ?なにか困っているようじゃが……」
部屋の中を見回そうとした星花の元に観月が声を聞いてやってきました。
観月は星花の顔を見上げると、何かを感じたのか不思議そうに聞いてきます。
星花はどきりとしてしまいます。
なぜなら、ちょうど――
「うん、実は観月ちゃんにお願いがあるんです」
(5月19日の日記)
「という訳で観月ちゃん、お祓いを――」
「心得たのじゃ!」
星花の言葉も言い終わらないうちに、観月はやる気いっぱいの声で返事をしました。
観月の目はぴかぴかと輝いていました。
「うむ、星花姉じゃはわらわにどんと任せるのじゃ!」
「ありがとうございます!よかったです!」
星花はほっと胸をなでおろします。これでひと安心――
「ふうん?なんだか、やけに張り切ってるわね」
「フフ――当然じゃ!久しぶりの晴れ請の祈祷じゃからの?腕が鳴ると言うものじゃ」
観月はわくわくっとした声で答えます。
そういえば――と、星花と真璃は張り切っている観月を見ながら思い出します。
最近は観月のそんなお祈りの姿を見ていなかったような――
「ふむ!では早速準備に取り掛かるとするかの、明日であるならば急がねばならぬ」
観月は腰に手を当ててむんと気持ちを切り替えると、急いで準備にとりかかります。
「あっ、星花も手伝います!」
「マリーはあんまりカンカン照りは嫌だけど――でも、星花お姉ちゃまのためなら平気だわ。
それくらい我慢するのが女王というものよ?」
「はい!にじもおてつだいする!」
「そらもー!」
「さくらも――」
気付くと、さくらに虹子に青空――星花の周りに妹たちが集まってきていました。
みんな星花お姉ちゃんの助けになりたいみたいです。
「みんな――ううっ、星花は感激です!ありがとうございます!」
空にお祈りするには空が一番良く見える場所が良いだろう、と言うことで
家の中で一番空がよく見える場所、リビングの大きなガラス戸の前には子供用の小さな机が運ばれて
その上にはお供え物として、星花の持っていたお菓子、水の入ったガラスのコップが置いてありました。
星花達で用意出来る精一杯の手作りの祭壇です。
――ひふみよいむなやこともちろらね
そこに向かって大幣をばさばさと振りながら、観月は言霊を紡いでいきます。
星花はその後ろで手を合わせながら一緒にお祈りをしていました。
(お願いします晴れてくださいお願いします!)
と何回も何回も心の中で、一生懸命に空に向かってお願いをしています。
――しきるゆいつわぬそをたはくめか
観月の綺麗な声で詠われる不思議な言葉。
朗々とした不思議なリズム。
星花にはその意味が良くわからないけれども、
なんだか“らしく”って、観月のお祈りの詩を聞くのは好きでした。
――うおえにさりへてのますあせえほれけ
そんな観月の詩が終わると――観月は祭壇に向かって深々とお辞儀をします。
あわてて星花も観月と同じようにぺこりとお辞儀をしました。
(晴れになりますようにっ!)
星花のたったひとつのお願いです。
「――ふぅ」
そして、お祈りも終わって、
観月の周りに漂っていた緊張感がふっと緩んで消えていきます。
「これで大丈夫じゃ」
星花の方を振り返った観月の額には小さな汗の玉が浮かんで、前髪が額にくっついていました。
「ありがとう観月ちゃん、後は――」
「星花ちゃん!持ってきたよー!」
静かな空気を換気するように、夕凪がどたどたという騒がしい足音一緒に部屋に駆け込んできます。
マリー達を引き連れて、その両手いっぱいに、てるてる坊主を抱えていました。
「んしょ……っと、これで全部かなぁ?」
「うん、それでおしまい」
窓に沢山吊るされて並んだ、いろんな顔のてるてる坊主
こうして眺めると、やっぱり壮観です。
「じゃあみんな一緒にね?――せーのっ」
みんなの声がひとつになって合わさります。
『明日晴れますよーに!』
そして、次の日――
(つづく)
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