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つりがね草

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お日様の側で


「sunny side」
続き――



お兄ちゃんと久しぶりのお散歩です。
せっかくだからと、春風お姉ちゃんがユキのお散歩用のお洋服を色々と出してくれました。
お兄ちゃんにはちょっとだけ待ってもらって――
春風お姉ちゃんと一緒に選んだのは、爽やかな感じのセーラーカラーのワンピースと
それに――柔らかなピンク色の小さな花柄模様が入ったボレロでした。

そのお洋服に袖を通して、春風お姉ちゃんと一緒に鏡の前に立ちます。
「変じゃないですか?」
「ううん、ユキちゃんにぴったり。髪も結んでおいたほうがいいかしら?」
そう言ってお姉ちゃんはユキの髪を二つに結んでくれます。
「うん!ユキちゃんかわいい!」
「そうですか?ウフフ――春風お姉ちゃんありがとうございます!」
それを聞いて鏡の中のユキの顔は、ちょっとだけ不安そうな顔から、嬉しそうな顔に変わってしまいました。

春風お姉ちゃんにお礼を言って、待ってくれてるお兄ちゃんのところへ急ごうとします。
「それじゃあ行ってきます――」
「あ、待ってユキちゃん、忘れ物!」
忘れ物?
あっ、そうです――
お帽子を忘れちゃいけません!
春風お姉ちゃんに取ってもらった帽子を両手で抱えて、お兄ちゃんの所へと――
「まだ忘れてますよユキちゃん?」
「あれ、まだですか?」
お帽子もちゃんと持ちましたし……?
「もう、日焼け止めです!ちゃんと塗らないと大変なことになっちゃいますよ?」
春風お姉ちゃんはポケットから日焼け止めを取り出すと、そのクリームをユキの半袖の腕に薄く伸ばしていきます。
「気分が良く無くなったら直ぐにお兄ちゃんに言うんですよ?」
「はい、でも――今日はとっても体調が良いんです!」

――

――――

「車には気をつけてくださいね?」
「うん、行ってきます」
「行ってきます!」

久しぶりに出るお外は――なんだかユキの覚えてるお外とは何だか違って見えました。

今までずっと雨だったから――
雨で外に出られなくて、空のお日様の光が久々だからでしょうか?

さっきまで眺めていたお庭よりも、
ユキの目に飛び込んでくる景色全部が――
目が痛くなってしまうほどにまぶしくて、キラキラと輝いて見えました。
帽子をかぶっていても太陽の光は、壁に、道路に反射して――
ユキの目の中に飛び込んできます。

「とっても眩しいですね――」
「…なんだか曇ってた分まとめて太陽が光ってるって感じだよね。うん――今日はほんとにいい天気だ」

お兄ちゃんも眩しそうに――目を細めながらを空を見上げて、溜息をつくようにそう言いました。
ユキもお兄ちゃんの目線を追って、一緒に顔を上げます。

ユキたちの上にある綺麗な青色のお空は、やっぱり、ユキが思っていたよりもずっとずっと広く感じてしまいます。
このまま見続けていると、なんだかそのままユキの体が浮かんで空に吸い込まれてしまいそう――
お空の端っこにぷかりと浮かんでいる真っ白な雲だけが「ここは空だよ」と教えてくれていました。

「はい、ほんとにいい天気です」

お兄ちゃんの言うとおりにお日様があんまりにも眩しいので、つい顔の前に手をかざしてしまいます。
『手のひらを太陽に 透かしてみれば』
ユキの白い手ひらにも真っ赤に血の色が透けて――暖かいものが流れているのが分かります。
お日様の光は首筋を、半袖のユキの肌をチリチリと焼いて――
なんだかそれだけなのに、嬉しくなってしまいます。

「――上ばっかり見て歩くと危ないよ?」
「わっ、ごめんなさい」
慌てて顔を元に戻すと、苦笑交じりのお兄ちゃんの顔がありました。
「ほら、転ぶと危ないから手を繋ごっか?」
「ありがとうございます」
お兄ちゃんの大きな手――ユキの手をしっかりと優しく包んでくれます。
ユキはお兄ちゃんのこの手が大好きです。
「――お兄ちゃん」
「なに?」
「今日はありがとうございます!」
「どういたしまして――って、まだ出発したばかりじゃない」
「えへへ――それでもです」
「?……まあいっか、うれしそうだし」

先に家を出ていたヒカルお姉ちゃんやマリーちゃん達に会えるかもしれない、と言うことで、
お散歩の行き先はいつもみんなの遊び場になっている公園になりました。

ですが――
「んー…ヒカル達いないみたいだね」
お兄ちゃんが辺りを見回しながら、そう言います。
「でもユキ公園に来れてよかったです」
「そう?それなら良かった」

公園の中の並木道。
サクラの木がいっぱい並ぶ道をお兄ちゃんと一緒にお話しながら歩きます。
少し前は、綺麗でかわいいピンク色の花をたくさん付けていた枝は――
今は柔らかそうな緑色の葉っぱをお日様に向かって、いっぱいに広げていました。

そんな葉っぱをすり抜けて―ー
ユキたちの歩く道に木漏れ日が出来ていました。
葉っぱの影の中に出来た大きな灯りと小さな灯り。
ひゅうと風が吹いてユキの肌を撫でると、とっても涼しくて、ちょっとだけくすぐったくて、
葉っぱが揺れる度に――
まるで風と葉っぱも楽しくおしゃべりをしてるみたいに、木漏れ日の形が色んな風に変わっていきます。

ざわざわ。
さらさら。

頭の上で葉っぱの声がします。
――木漏れ日の道は、大好きな道です。

「お、シロツメクサがいっぱい咲いてる」
「どこですか?」
「ほら、あの辺り」
お兄ちゃんが指を指した先には公園の広場があって――
そこにシロツメクサの白いお花が広がっていました。
「わぁ、きれいですね――お兄ちゃん、あっちに行きませんか?」
「よし、ちょっと行こっか」
シロツメクサを見つけてちょっとやりたい事が出来ました。
レンガで舗装された道から外れて芝生が広がる広場に入ります。

広場はふわりと夏の草の香りがしました。
「んしょ……」
「?……ユキさっきから何してるの?」
「ちょっと待ってください……出来ました!」
ユキは作った“それ”を後ろに、お兄ちゃんに見えないように持ちます。
「あの――お兄ちゃんちょっとしゃがんでもらえますか?」
「こう?」
ユキのお願いに、お兄ちゃんはすぐに座ってくれました。
不思議そうなお兄ちゃんの顔とユキの顔が同じくらいの高さになります。
そのお兄ちゃんの頭へ――
「はい、プレゼントです!」
「――これは?」
「お花の冠です」
「ああ、なるほど――ありがとユキ」
「どういたしまして――ウフフ、お兄ちゃんとっても似合ってます」
「……そうかな?」
「はい、とってもです♡」
少し落ち着かなさそうでしたが、お兄ちゃんは喜んでくれたみたいでした。
良かったです!

「……そうだ、じゃあユキ、俺にも作り方教えてくれない?」
頭の冠をいじりながら、お兄ちゃんはそう言いました。
「お花の冠のですか?」
「うん、ちょっと作ってみたくなってさ。いい?」
「もちろんです」

――いつもはお兄ちゃんにいろんなことを教えてもらってるユキですが、
今日はユキがお兄ちゃんに教えてあげられる番です!

「えっと――それで、最後はこんな感じです」
「こうして、こう?……よし出来た!の、かな?」
「はい、完成です!」
自信なさそうなお兄ちゃんの表情が――少しだけ可愛くて
でもお兄ちゃんの手の上には、素敵なお花の冠が出来ていました。

「うん…こんな感じかな?じゃあこれは、はいプレゼント」
お兄ちゃんは自分の作ったお花の冠をしげしげと眺めると、それをユキの頭の上――帽子の上に、ぽんと乗せました。
急のことにユキはびっくりしてしまいます。
「ユキに、ですか?」
「うん、形が悪くて恥ずかしいんだけど……これのお礼にね?」
お兄ちゃんは、お兄ちゃんの頭の上のユキが作ったお花の冠を指さして言いました。
「えっと、やっぱりもっと上手く作ったほうが――」
「ううん!ありがとうございます!」
お花の冠をユキに――つくるのに夢中でちっともそんな事は考えていませんでした。
だからすごくびっくりして――どきどきしてしまいました!
「うん、良かった」
「――これはユキの宝物です♡」
「はは、そこまで言われると何だか照れるね」
「でもホントのことですよ?」
「……やっぱりもっとちゃんと作っておけばよかったかな」


「それじゃあ戻ろっか?」
「はい!」
風がひゅうと、お兄ちゃんとユキの周りを通って行きます。
宝物が乗った帽子を飛ばされないように押さえながら――
ユキとお兄ちゃんは一緒に、散歩の続きを戻りました。


――――

――

「……なんだ、それ?」
俺達よりも後に帰ってきたヒカルは、俺の頭のそれをを見るなり指して聞いてきた。
「……見て分かるだろ?」
「ああ、いや、聞き方が悪かった。オマエはなんでそんなの着けてるんだ?」
「なんでって……」

「変……ですか?」
「え?ユキ?」
ヒカルの声にユキがとことことやってくる。
――俺と同じように、頭に花の冠をのっけて。
「…これはユキが作ってくれたものだよ」
「ああ、なるほど――変じゃないよユキ、よく似合ってるじゃないか、なあ――?」
クツクツと笑いをこらえながらヒカルは俺を見ている。
会う姉妹会う姉妹の視線がこうして顔ではなく頭に向かって、その表情が変わるのを良く見れるのは、ちょっとだけ辛いけど――
それよりも、ユキの嬉しそうな表情が見られれば、それだけで十分だった。
ちょっとだけ辛いけど――

「ウフフ――お兄ちゃんとおそろいです♡」

(終わり)

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