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つりがね草

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織姫

「近頃暑い日が続いておるの」

わらわの目の前にキュウビを座らせて、ひとまずそんな事を話す。
突然呼び出しての時候のあいさつに、キュウビは「なんだろう?」と不思議な顔をしているのじゃが
フフ――
これを見て、どんな表情をするのかのう?

「そんな中頑張っているキュウビに――ご褒美じゃ!」

体の後ろに隠していた物をキュウビの前にぱっと広げて見せてみせる。
それを見たキュウビの目が、まんまるに見開かれて――

「わらわお手製の赤い前掛けじゃ!」

細く紐のように切られた赤い布、その丁度真ん中に付いている前掛け部分の赤い四角い布。
針も糸も使ってない、もとい使えなかったのじゃが……キュウビの前に広げられた一枚布の前掛け。
よくお地蔵様やお稲荷様にも着けられている、あれじゃ。

「どうじゃ?」
さっきまでぽかんとしておったキュウビは、今はもう体を乗り出して
鼻をいそがしそうに鳴らしながら、わらわが出した物が何であるかを確認しておった。
「コン!ココン!」
「フフ、気に入ってくれたようじゃの?」
「キューン♡」

キュウビの耳と尻尾がぴん伸ばして返事をする。
その喜びように、自然とこちらまで笑顔になる。
「うむ、良かったのじゃ♡」
うれしい気持ちと、ほっとした気持ちがわらわの心の中にじんわりと満ちてくる。

キュウビにご褒美と言っても、わらわがキュウビに贈れる物は限られておる。
例えば犬であったらおやつであったり、新しいおもちゃや首輪なのじゃが……
キュウビには何か特別なものをあげたくなっての。

「コォン、コォン!」
「これこれ、そう焦るでない」

前掛けを広げたままだったわらわの腕に、キュウビが両手を乗っけて催促してくる。
キュウビは早く付けてみたくて仕方が無いようじゃ。

「んしょ……」

キュウビに抱きつくようにして、首の後ろ側で紐を結ぼうとしてみる。
モフモフとしたキュウビの毛並みが柔らかくてくすぐったい。
蝶々結びはまだあまり慣れていないのじゃが――

「キュー、キュウン♪」
「む、動くでない」

「ンキュゥ」
「む、ちょっときつかったかの」

「これでどうじゃ?ほれ」
「ココン!キュゥゥン♪」
キュウビは飛び上がると、くるんくるんと宙返り。
体いっぱいに喜びをあらわして、ひらりと前掛けがなびいて――
うむうむ、よく似合ってるの。
「キュゥッ♡」
「これ、急に飛びつくでない!」
「キュキュー、キュウンキュウン」
「喜んでもらえたようでわらわも嬉しいのじゃ。しかし……んむ、顔を舐めるのはやめるのじゃ」
「キュゥン、ココンココン♪キューキュキュウン!」
抱きしめてやろうと思ったキュウビは、嬉しさのあまりに声が聞こえていない様子。
「分かったわぷ、これ!分かったから止めるのじゃ!」
「ココン♡」
「わざとじゃ!?」

(終わり)

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